2013年07月号
心地よい、やすらぎとリラクゼーションをもたらすという1/f(エフブンノイチ)ゆらぎという言葉を聞いたことがあるかと思います。
ゆらぎとは、密度や力が時間とともに平均値から微妙に変化することをいい、このゆらぎが周波数fに反比例して起こっているものを言います。
1/fゆらぎは不思議にも人体、生命を含めて多く認められ、自然界の普遍的な現象のようです。その代表は、私たちの心臓の拍動であり、それは機械のごとく全く規則的に打っているのではなく、速くなったり、遅くなったり、微妙にゆらいでいます。赤ちゃんがお母さんの胸に抱かれて気持ちよく寝てしまうのは、この1/fゆらぎを持つ心拍を聞いているからのようです。
1/fゆらぎは人間が関係しているものにたくさん見られ、たとえば高速道路の車の走り方も決して均等間隔で走っているのではなく、固まって走ったり、まばらに走ったりしており、その密度は1/fになるそうです。
また、有名なのは音楽で、クラッシック音楽には1/fゆらぎが多く含まれているそうです。
電車の振動、小川のせせらぎも1/fゆらぎで、このためでしょうか、リラックスして思わず眠くなりますよね。
心拍のゆらぎは、主に自律神経によって調節されているようです。最も顕著なものは、呼吸のリズムに関係した心拍変動で、吸気で心拍がはやくなり、呼気でおそくなるリズムで、(呼吸周期1回が4秒とすると、0.25Hzの周期となります)主に副交感神経が関与しているようです。
10秒に一回位の周期(0.1Hzの周期)も認められ、血圧変動に関係したゆらぎで、主に交感神経が関与しているといわれています。これら心拍変動の周期(周波数)をX軸に、その強さ、密度をY軸にとり、対数表示でグラフに表しますと、周波数fに反比例していることがわかります(y=1/fXと表わされます)。
X=-1の時が、1/fゆらぎです。この1/fゆらぎは、上記の自律神経機能(数秒単位の変化)のみで規定されるものではなく、その成因は明らかではありませんが、もっと長時間単位(数十分から数時間)のゆらぎもかかわって生じているようです。
健常者の心拍でみられる1/fゆらぎは、加齢によりその傾きが深くなるとの報告(心拍の規則性が強くなる)があり、不整脈がある人や、心臓の機能が弱っている人、自律神経異常がある人などでは、傾きが浅くなる(規則性が失われてくる)等の報告があります。
1/fゆらぎは、生体にとって自己相似性を有する適度なゆらぎで、非常に大切なもののようです。規則的過ぎても良くなく、大きく変化しすぎるものも好ましくない、予測できるくらいの少しの変化が続いているのが、心地よく、リラックスできる状態のようです。