薬はのみはじめたら、一生のむんですか?

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2011年11月号

 患者様に薬を初めて処方しようとするときよく聞かれる言葉です。高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の薬は長期にわたってのむことになりますが、あまり自覚症状が無いことが多いせいもあり、薬をのむということが自分は病人だと認定されたようで、抵抗があるのは自然のことであります。昔、病気といえば、自覚症状があり、具合が悪いことを指し、症状がとれた時点で治癒と思われていました。もちろん、薬や治療も症状がある時だけで、ある意味わかりやすかったと思います。現代でも、風邪をひいたとかお腹をこわしたとかの治療は一緒です。

 しかし、近年重大な障害を生じる疾患(脳卒中、心筋梗塞など)の前段階のリスク状態として、先にあげた生活習慣病が認識され、治療対象となりました。なにも症状が無いのに、なぜ薬をのむのかと思われると思いますが、脳卒中、心筋梗塞などの重大な疾患の予防のためにのんでいるだと思って下さい。薬をのんでいても、実際元気に健康な方と同様にすごせるのですから、なんの問題もなく、自分が病人と悲観する必要も全くありません。薬をのみながら、健康に留意している人の方が長生きし、逆に健康だと思い込んでいる人の方が危険なことも多くあります。

 予防のためにのむのですから、自分が元気でありたい年齢までのんでください。疾患の予防のためには、血圧でもコレステロールでも血糖でも、安定してずっと下げていることが必要です。世界の研究で、薬をのんでコントロールしている人の方が、長生きできたという論文が多くあり、効果は証明されています。一時だけ、薬をのんで正常に下がったから、自己判断で薬を中止したという方がおられますが、これはダメです。結果的に最初から薬をのんでなかった方と同じ効果となります(脳卒中、心筋梗塞の発症リスクが下がりません)。

 まず、生活習慣の改善をし(過食と運動不足の改善、禁煙、飲酒の減量等)を行い、3か月たっても検査値が改善しないなら、自分の努力だけでは正常化は無理ですので、薬の力に頼って下さい。そして、副作用が無い限り、のみ続けてください。



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