2013年12月号
2013年は『今でしょ!』が流行りましたが、今流行っているのは、インフルエンザかもしれません。
そこで、インフルエンザ予防のワクチンについて書いてみます。現在のワクチンの発症予防効果は、50~90%といわれております(対象年齢、流行ウイルスとワクチン株が一致したかどうか等で効果に差があります)。
予防できないこともあるということで、少しがっかりされる方もあるかもしれません。
でも、ワクチンには間接的な防御効果もあることが認められているんです。つまり、元気な人がワクチン接種を受けて、インフルエンザの発症を予防すると、まわりの弱い人(幼児や高齢者など)に感染させることが少なくなり、インフルエンザによる死亡率が下がることがわかったのです。
現行のワクチンは、孵化鶏卵にウイルスを接種し増殖させ、精製して製造します。
そして、精製したウイルスにエーテルを加えてウイルス粒子を分解し、赤血球凝集素(hemagglutinin;HA)を取り出します。ワクチンの主成分はHAなので、HAワクチンとも呼ばれています。これはウイルス粒子をそのまま不活性化した全粒子ワクチンより免疫原性が低く、有効性に限界がありますが、副作用が少なく、安全性が高いため現在使用されているのです。季節性ワクチンは2009年まではA型のH3N2(香港型)とH1N1(ソ連型)およびB型の3価ワクチンでありましたが、ご存知のように2009年に新型インフルエンザH1N1pdm09が出現大流行しました。
このため、2009年は従来の季節性ワクチンと新型のH1N1pdm09単独のHAワクチンが生産され、2本立てとなりました。
2009年にインフルエンザワクチンを2種類接種した記憶がある方、多いと思います。
2010年以降はH1N1(ソ連型)に代わってH1N1pdm09が組み込まれ、H3N2(香港型)およびB型を含む従来と同様の3価ワクチンとなっています。今年もこの3種類のウイルス型が、いずれも流行の可能性があります。
将来、流行が懸念されている鳥インフルエンザ(H5N1)用にもワクチンが作られていますが、ウイルス粒子そのままで精製した全粒子ワクチンで、副作用が強く、まだ実用化されていません。2013年春には中国で、別の鳥インフルエンザA(H7N9)も発生しましたが、その後患者発生は減少しているようです。
鳥インフルエンザに対しても、今後、副作用を抑えた新たなワクチン開発が望まれています。尚、いずれの鳥インフルエンザにも現在使われている治療薬(抗インフルエンザ薬)は有効ですので、発症したら早めの受診が肝要です。