インスリン分泌が多いのに糖尿病?

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2020年01月号

糖尿病インスリンは、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞から分泌されるホルモンです。

その主な働きは、血液中のブドウ糖を肝臓、筋肉、脂肪組織にエネルギー源として取り込むことで、その結果、血糖値が下がります。糖尿病は、インスリンの作用不足により、高血糖状態が続く疾患で、慢性的な高血糖は、数々の深刻な合併症を生じてきます。

糖尿病には、いろいろなタイプ、病態、原因があります。まず、大きく1型糖尿病と2型糖尿病に分類されます。

  1. 1型糖尿病は、若年者に多く、インスリン分泌が絶対的に不足し、生命維持にインスリン療法が必要な病態で、大部分は自己免疫性の原因と考えられています。
  2. 2型糖尿病は、糖尿病の大部分を占めるタイプで、生活習慣病の一つと考えられています。2型糖尿病では、1型のようなインスリンの絶対的欠乏はありませんが、相対的なインスリンの作用不足が存在し、そのインスリン分泌能においては、2つのタイプに分けられます。

(A) 1型と同様に分泌が障害されている(分泌が少ない)タイプ

(B) 逆にインスリンが正常~過剰に分泌されているタイプ

(*両者の要素を併せ持つタイプ、中間のタイプも存在します。)

では、(B)のような、血糖を下げるホルモンのインスリンが、正常~過剰に分泌されているのに、高血糖を来たしているとは、いったいどういうことでしょうか。

実は、(B)のタイプの方は、インスリンが効きにくくなった状態と考えられています。つまり、インスリンの充分な効果を得るために、インスリンを過剰に分泌していますが、尚、効果不足で、高血糖のままなのです。この高インスリン血症の状態を、インスリン抵抗性と呼んでいます。2型糖尿病の中で、このタイプの人は、かなりの割合存在します。そして、インスリン抵抗性の原因は、複数の遺伝因子に、過食、運動不足等の環境因子が大きく関わっていると考えられています。

インスリン抵抗性の人には肥満が多く、研究の結果、腹腔内脂肪蓄積と密接に関連していることが、判明しています。お腹が出ている、お腹に脂肪がたまっている状態で、まさに、メタボリック症候群の病態に一致します。そして、この高インスリン血症の状態は、脂肪肝、血圧上昇等をきたし、動脈硬化の促進につながることもわかってきました。

当院でも、糖尿病の患者様には、年一回、血液検査でインスリン濃度を測定しております。インスリン分泌の多いタイプの糖尿病の人は、インスリン抵抗性メインの病態と思われますので、生活習慣の改善が必要です。しっかりと、食事療法、運動療法を行い、減量すれば、かなり良くなる可能性があります。



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