妊娠と薬

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2019年06月号

妊婦さんが、内科などの産科以外の科を受診する場合、その科で投与される薬が、胎児に悪影響を与えないかどうか、心配になると思います。

薬剤の胎児への影響は、妊娠の時期で、表のように3つに分けて考える必要があります。

受精~2週=妊娠4週 全か無かの時期
影響が大きければ流産、小さければ修復可能であり、形態異常の可能性はない。
妊娠4~12週ごろまで 催奇形性に注意しなければならない時期
骨格や器官ができる時期で特に注意を要する。
上記以降 胎児毒性に注意しなければならない時期
胎盤を通して胎児に移行する胎児毒性のある薬に注意。

催奇形性のある薬物としては、サリドマイド、男性ホルモン、ビタミンA、ミコフェノール酸、ワーファリン、D―ペニシラミン、抗てんかん薬、ミソブロストール、メトトレキセート等が報告されています。

妊娠12週以降で注意が必要な薬剤として、非ステロイド性抗炎症薬があります。胎児の動脈管を収縮させて、生後の肺高血圧症のリスクを上げると言われています。イブプロフェン、ロキソプロフェン、ジクロフェナク等は使用しないようにしましょう。(アセトアミノフェンは安全と言われています。)

慢性疾患で内科に通院している女性の場合、妊娠を希望する場合は、主治医とよく相談し、妊娠禁忌薬が処方されているなら、薬剤を変更した上で、計画妊娠を行うことが望ましいです。例えば、甲状腺機能亢進症で、チアマゾールで加療している場合は、催奇形性の報告がありますので、他剤に変更する必要があります。高血圧で、ACE阻害薬、アンギオテンシンII受容体阻害薬ARBを内服している場合、妊娠12週以降での胎児毒性が知られていますので、他剤に変更の必要があります。

また、糖尿病患者様では、妊娠、出産に関し、胎児形態異常、流産、巨大児等の異常発生のリスクが高くなることが知られています。妊娠中は経口血糖降下薬による治療をインスリン治療に変更し、より厳格な血糖コントロールを行わねばなりません。

妊娠禁忌薬とされるものには、多くの薬物がありますが、動物実験のデータを基に決められており、実際ヒトの妊婦に有害かどうかは、わからないものも多いようです。心配な時は、担当の主治医、産婦人科医にご相談ください。

(参考:相談できる専門機関として、国立成育医療研究センター内“妊娠と薬情報センター”もあります。)



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